ソラマメブログ

2009年06月11日

到着

自分を連れてきてくれた船の、遠ざかっていく汽笛を聞きながら、彼女は大きな異国の門に呆然と立ち尽くした。


昔の租界を思わせるような島、しかし、そこを上海や香港と定義するにはあまりにも雑多・・・
島からこぼれんばかりに立ち並ぶさびれた数々のビル群、
ビル群とは正反対の極彩色のネオン、
行き交う人々もさまざま・・・

常夜の夜の住人のための島。


彼女は西洋かぶれの自国に飽き飽きし、何気に新聞の小さな記事に載っていたこの島に恋い焦がれた。

恋い焦がれるだけで済んでいたうちはよかったが、ひょんなことからその島でつくられたシルクのチャイナドレスを
手にしたとき、彼女はため息をついた。
なめらかな生地の手触りだけでなく、自分にはないシルエットと、ライン・・・とても、自分では着こなせない。
しかし、あの島にはそれを着こなせる人々が住んでいるのだ。
そう思うと、いてもたってもいられなくなった。
無我夢中で独学で裁縫を学び、夜に刺し傷だらけの手を見つめながら、この島を思い続けた。
そして、やっと、それなりの技術が身に着いたとき、何もかもを金に換え、トランクに裁縫の道具だけを詰めて、


船に乗り込んだのだ。


「・・・・・」
到着


http://slurl.com/secondlife/kowloon/146/17/24




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Posted by cooleyes kidd at 22:40│Comments(0)プロローグ
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