ソラマメブログ

2009年06月25日

鍋男

どんどん進んでいくと、屋台と茶店の間のような場所にでた。

シンプルといえば聞こえはいいが、どこか、ぞんざいなテーブルとイスがしつらえており、テーブルには
豚足の煮たのや、中華まんじゅう、闇鍋とかかれた鍋もある・・・。
無造作におかれた、ドラム缶、neokowloonnetの端末も置かれている。
メニュー表をみると、たくさんメニューがあるようだが、彼女には異国の言葉でかかれたメニューは読む
ことができなかった。

黒髪の女性はここのことをいったのだろうか・・?

妄人らしいものはいない。
いや、もしかしたら、kowloonの道は入り組んでいるゆえに間違えたのかもしれない。

もっと、奥へ進んでみるか・・・

そう思いかけた時、端に大きなボイラーのような圧力なべのようなものを見つけ、なにげなく、触れそう
になった。

「おい、あんた!触ると火傷するぞ!」

その鍋はそう大声で彼女を叱った。
「す、すみません・・・」
確かに湯気は黙々と上がっており、中には真っ赤な何かが煮えている。
「まったく、その白魚のような手を焦げ付かせたくないなら、不用意になんでも触るもんじゃないよ」
その鍋は今さっきの荒げた声とは思いもつかぬほど、やさしく渋い声を出した。
「はぁ・・・」

妄人だ・・・

電話男はまだ人の形を少しは残していたものの、この妄人はすでに人の姿を失っている。
ただの鍋がど~んと置かれているのだ。
「俺は鍋男、今じゃこんななりだが、昔はここの店主さ。うまいものをだすってんで、盛況だったんだぜ」
鍋男は自慢げにそうかたった。
「ああ、今だってその煮猪脚をつくったとこさ、食べてみろよ」
人当たりのやさしい男だったのだろうと、彼女は思った。


鍋男
http://slurl.com/secondlife/kowloon/111/74/24





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Posted by cooleyes kidd at 07:00│Comments(0)5 青龍路
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